伊那市通り町商店街。定休日が多い水曜日はシャッターが閉まっているためか、寂しく感じる方もいるかもしれません。しかし、そんな水曜日の月に一回、実は通り町の商店主は商店街以外の場所で働いているのです。伊那まちの再生やるじゃん会の越後屋菓子店、竹村さんにお話しを伺いました。


車8台で、各地域を回っています

ーー伊那まちの再生やるじゃん会とはどんな活動ですか?

伊那には商店街が10あるのですが、それぞれが別の活動をしていて商店街同士のつながりがありません。でも、ここを歩く人にとっては、商店街の違いなんて関係ないし、よくわからないことですよね。それで、全体で協力して町の活性化をしようということで商工会議所などの支援を受けて始まったのが、伊那まちの再生やるじゃん会です。

空き店舗を活用したタウンステーションづくりや、ちびっこ駅伝、ハロウィンイベントなどでの市街地活性、バラの植栽による町づくりや呑み歩きイベントなどについて、7つの委員会があります。それぞれの委員会の骨子は商工会議所で作ってくれていたんですが、その内容を踏まえて活動を進めていくことになったのが平成23年です。私はそのなかの一つの委員会で委員長になって、講師を呼んで勉強会をしたり買い物支援を始めたりしました。


 

ーー買い物支援というのは?

商店街の商品を車に積んで、伊那市内の各所で出張販売をするという取り組みです。今は市内の公民館を中心に4か所ほど、毎月一回、お店が休みの水曜日に回っています。自分たちの商品を自分たちで積んで、車8台くらいで行くんですよ。

 

ーーお店がお休みの日に行くのですね。

商店主たちが自ら行くので、休みの日じゃないと行けません。水曜日はお店の定休日ですが、忙しいですよ(笑)。自分たちが行くことで、商品の説明ができるし、直接話すことで、自分のお店でどんなものを扱っているか知ってもらえます。洋服屋さんだったら、持って行くことのできなかったサイズや色の注文を受けることもあります。パンに生鮮食品、金物、洋服、下着、お菓子に惣菜など、商店がそれぞれの品を持って行くので、商店街の宣伝にもなり、やるじゃん会の活性にもつながっていると思います。

群馬や広島、奈良などいろんな地域から視察に来てもらうこともあるんですが、来るのは市役所の職員だったり、区長さんだったりで商店主が来ることはないんですよね。でも行政主体でやると、売り方がわからないから商売トークができませんよね。それで人が集まらなかったり売上が伸びなかったりすれば、続かない。

やるじゃん会の買い物支援は、商工会議所などとの連携からスタートしましたが、商店主が中心となって進めたことで、楽しみに待ってくれるお客さんのいる息の長い取り組みになっていると思いますね。
 

ーーなにか課題となっていることはありますか?

買い物に行くことができないお年寄りは増えていますから、地域からの要望は多くなっています。でも、私たちも自分たちのお店が休みの日を返上して行っているので、対応しきれません。人手や時間的な体力があれば、もっとできるのかもしれませんが、現状としても、なんとかやりくりしているような状況です。広がりを持たせるには、商工会議所や行政などとの協力体制も考えないといけないですね。

商店主の仲の良さが伊那のいいところ

ーー競合するお店同士も一緒にやっていますね

伊那の商店主は、横のつながりがあるのがいいところですね。もともと一緒に飲む仲でもありますから(笑)商店街には越後屋含め、お菓子屋さんはたくさんありますが、やることにインパクトがあれば町が活気づきますし、まとまってできることには積極的です。
 

ーーほかにも何かされているんですか?

最近では、お菓子屋さん7店舗で協力して、各店舗の一番のおすすめ品を詰め合わせにした、「伊七菓(いなか)」という商品を限定販売しました。これは大好評で、お客さんがたくさん来てくださって、すぐに売り切れてしまいました。「伊七菓売り切れ」って貼り紙をしたら、店の前まで来たお客さんがスルーしていったり、ほかの店舗で残っているところの情報共有をして、「どこどこのお店になら、まだあるよ」ってお客さんに教えたりして(笑)。お菓子は持ち運びができるものですから、100パーセント同じものが、どのお店でも買えるのがいいですね。

お菓子屋さんが集まって何かをする、というイベントを始めてやったのは、商工会議所のイベントである商工祭です。商店街のタウンステーションにお菓子屋さんが集まって、タイムセールをしたり、福引きをしたりしました。その時の福引きの特等が各店舗のお菓子詰め合わせだったので、「伊七菓」の企画も、そういった前提となるイベントから生まれてきたと言えますね。

 

ーーこれからどんな活動をしていきたいですか?

買い物支援にしろ、「伊七菓」の企画にしろ、商売だけのためにやっているわけではないんですよね。自分で買い物に行けない人の役に立ったりとか、商店街の活性につながってほしいという思いがあります。これからも伊那市や、商店街が盛り上がるようなことをしていけたらいいですね。

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有限会社 越後屋菓子店
JR伊那市駅の駅前に店を構える明治15年創業の老舗菓子店。「伊那のまゆ」「月夜唄」「お蔵米」の3種類のお菓子のみを、卸は一切せずに、自社店舗のみで販売しています。

住所:〒396-0025 伊那市荒井3473
TEL/FAX:0265-72-2512
営業時間:9:00~19:00 ※水曜日定休

担当支援員よりひとこと
出張販売は地域の商店街だからこそできる買い物支援サービスとして、7年間続いており地域に定着してきています。始めは補助金を活用した事業でしたが、現在は自立して事業を継続、行政や社協も関心を示すなど活動が徐々に広がりつつあります。今後も商店街や同業者間等での意欲的な取り組みを支援します。